プロジェクトについて

第二次世界大戦後の日本において、憲法改正は常に、国のあり方に関わるあらゆる議論の核心となってきた。1990年代に入ると、「戦後憲法」として1947年に施行された日本国憲法の改正草案が多数、発表された。とりわけ、1994年に読売新聞が公開した草案は、これまでタブー視されてきた憲法改正論に風穴を開け、戦後日本の憲法論議において分岐点をつくった。戦後の長きにわたり、政権与党の座にあった自由民主党(自民党)は、2005年11月に独自の草案を発表、更に野党時代の2012年に新たな草案を作成した。かつて、自民党に対抗する政党、主要新聞、経済団体、そして市民団体の多くが、憲法改正に反対してきた。しかし、北朝鮮危機を始めとする東アジア情勢の変化など経て、賛否双方の声が拮抗するようになった。

政治から社会まで、あらゆる局面で歴史的な転換が予測されるなかで、憲法改正をめぐる議論は、俯瞰的な日本研究に非常に有用な視座を与えているといえる。戦争放棄を規定した第9条が注目されやすいが、憲法と関連諸法で改正が議論されているその他の事項もまた、今後の日本を考える上で重要である。そこには例えば、行政権、安全保障、女性の地位、皇位継承、教育制度、家族の形、そして思想・良心、表現、信仰の自由を含む国民の権利などが挙げられる。憲法を代表とする国の法体系に変更を加えることは、政治、経済、社会、そして宗教と幅広い領域において、日本の将来を決定づけることになる。

2005年の開始以来、憲法改正研究プロジェクトは、日本の憲法論議における多様な声を集めてきた。プロジェクト発足当時は、デジタル資料の保存が主軸であった。その後、慶應義塾大学との提携により、アジア、ヨーロッパ、そしてアメリカなどから広く研究者が参加し共同研究を進めてきた。2021年には、それまでの成果がJapanese Constitutional Revisionism and Civic Activismとして一冊の本にまとめられた。本書では、日本国内にとどまらずアジアを含み、日本国憲法改正を取りまく市民の運動について考察した論稿を集めた。

本ウェブサイトは、Japan Digital Research Centerによる運営の下、学生、研究者のみならず、日本の憲法改正問題に関心を寄せるすべての人に、歴史的資料から最新情報まで、さまざまなリーソースを提供する。