2003

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草案<全文>

新しい憲法をつくる国民会議(2003年)

Atarashii Kenpō o Tsukuru Kokumin Kaigi(別称:自主憲法制定国民会議)

「日本国憲法【新憲法案】(第一次案)」1
2003年5月3日

《注》本文中にある「※」印は会員による数回の検討で、多少意見が分かれた条項・文章について、愛知会長案を採用したことを意味する。


前文

我が日本国は、建国以来、伝統、文化、国民統合の象徴たる万世一系の天皇のもと、国民が力を合わせ、幾多の苦難に遭遇しながらもそれらを克服しつつ、生成発展を遂げてきた。

かかる歴史の中で、われわれの祖先は、我が国独自の文化を築き上げてきた。とりわけ、人の尊厳を重んじるがゆえに人の和を尊び、自然を畏敬するがゆえに自然との調和を図る伝統の中で培われた「共生の精神」こそ、我が日本国の文化の精華である。

われわれは、日本国の基本的国家体制として、天皇制を堅持するとともに、日本国の文化の精華である「共生の精神」を元に、自由と平等、権利と責務を、理性をもって均衡させた真正な民主主義社会、及び、われわれに続く世代の幸福を念頭に置いた、自然との調和の中に生きる持続可能な社会の実現を期する。

併せて、世界の抱える数多くの難題を解決し、諸民族が共生する全地球的な恒久平和を実現してゆくために、積極的な役割を果たしてゆく。

日本国民は、二十一世紀を「共生の世紀」たらしめることをわれわれの使命と位置付け、ここに、日本国民の至高の意志により、新しい憲法をもってこれを宣言する。


第1章 天皇

第1条〔天皇の地位〕
天皇は、日本国の元首である。
2 天皇は、対外的に日本国及び日本国民を代表するとともに、日本国の伝統、文化、及び国民統合の象徴である。

第2条〔皇位継承、元号〕
皇位は、世襲のものであって、国会の承認した皇室典範の定めるところにより、皇統に属する者が、これを継承する。
2 皇位の継承に際しては元号を定める。

第3〔国事行為の原則〕
天皇は、憲法の定める国事に関する行為を行う。
2 天皇は、国事に関する行為を行うにあたって、内閣の助言を受ける。天皇の国事に関する行為については、内閣が責任を負う。
3 天皇は、皇室典範の定めるところにより、国事に関する行為を世嗣の資格を有する者に委任することができる。

第4条〔摂政〕
天皇が成年に達しない場合、もしくは皇室典範が定める場合には、摂政を置くことができる。摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。
2 摂政の行為は、前条の規定を準用する。

第5条〔天皇の任命権〕
※天皇は、国会の指名に基づき、国会議長を任命する。
2 天皇は、国会の指名に基づき、内閣総理大臣を任命する。
3 天皇は、内閣の指名に基づき、最高裁判所長官を任命する。
4 天皇は、内閣の指名に基づき、憲法裁判所長官を任命する。

第6条〔国事行為の内容〕
天皇は、次に定める国事に関する行為を行う。
一 外国の大使及び公使を接受すること。
二 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
※三 内閣の指名と国会の承認に基づいて、全権委任状並びに大使及び公使の信任状に親署し、及びこれを授与すること。
四 憲法、法律、政令及び条約を公布すること。
五 国会を召集すること。
六 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
七 国務大臣及び法律の定めるその他の公務員の任免を認証すること。
八 恩赦、刑の減免及び復権を認証すること。
九 栄典の授与を行うこと。
十 祭祀その他の儀式を行うこと。

第7条〔天皇の準国事行為〕
前条に規定する国事行為の他、天皇が、元首として対外的に日本国を代表し、日本国の伝統、文化、国民統合を象徴するために必要な一切の行為は、国事行為に準ずるものとする。

第8条〔皇室の財産〕
皇室の財産は、国庫に属する。皇室に関わるすべての費用は、予算案に計上し国会の議決を経なければならない。


第2章 国旗・国歌

第9条〔国旗・国歌〕
日本国の国旗は「日の丸」である。
2 日本国の国歌は「君が代」である。


第3章 安全保障

第10条〔世界平和・地球安全保障の理念、国際社会・国際機構への積極的参加〕
日本国民は、武力紛争、抑圧、飢餓、貧困、環境破壊といった人類の災禍が地球上から除去されることを希求する。
2 人類に対する直接の殺傷でなくとも、中長期的に地球環境を破壊し、地球の安全を脅かすような行為は、これを認めない。
3 前二項の目的を達成するため、日本国は、出来うる限り平和的手段を尽くして正義に基づく国際秩序の形成、維持、発展に主導的な役割を果たすよう努めるとともに、確立された国際機構の運営及び活動には、軍事力の行使を含む責任ある立場で積極的に参画する。

第11条〔自衛権、同盟の締結〕
日本国は、自らの独立と安全を守り、急迫不正の侵略に対しては、これに対抗し防衛する権利を有する。
2 日本国は、国家防衛の目的に即し、他国と同盟を組むことができる。

第12条〔国防軍の保持、組織〕
前二条の目的を達成するため、日本国は、国防軍を保持する。
2 国防軍の組織は、法律でこれを定める。

第13条〔軍の政治への不介入〕
国防軍は、政治に介入してはならず、常に党派に超越することが要求される。

第14条〔最高指揮監督権〕
国防軍の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に帰属する。

第15条〔国会の承認〕
国防軍の出動には、第八十八条に規定される緊急事態宣言が布告されている場合を除いては、国会の承認を必要とし、動員には、外国の侵略を受けた場合又はその危険が切迫した場合の他は、国会の事前の承認を必要とする。

第16条〔軍事裁判所〕
武官は、軍事上の犯罪について、軍事裁判所の管轄に服する。
2 武官に課せられるべき基本的人権の制限及び軍事刑法については、法律でこれを定める。
3 軍事裁判所は、最高裁判所の統括管理に服せず、内閣総理大臣がこれを統括管理する。
4 軍事裁判所の組織、訴訟手続については、法律でこれを定める。


第4章 国民の権利及び責務

第17条〔国民の要件〕
日本国籍を有する者を日本国民とする。国籍取得の要件は、法律でこれを定める。

第18条〔基本的人権の享有〕
すべて国民は、基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する権利は、侵されることのない権利として、われわれに信託されたものである。
2 この憲法が保障する権利の外国人に対する適用は、法律でこれを定める。

19条〔個人の尊厳、自由・権利の尊重・濫用禁止、適正行使の責務〕
すべて国民は、個人として尊重される。
2 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、一般の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最も尊重される。
3 国民は、この憲法が国民に保障する自由及び権利を濫用してはならず、常に一般の福祉のためにこれを利用する責務を負う。

第20条〔法の前の平等〕
すべて国民は、法の前に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分、門地、心身障害その他を理由とした不合理な差別を受けることはない。
2 栄誉、勲章、その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。ただし、法律で定める年金その他の経済的利益の付与は、この限りではない。

第21条〔人格権〕
名誉、信用その他の人格権は、これを保障する。
2 何人も、自己の私事について、みだりに干渉されない権利を有する。
3 通信の秘密は、これを保障する。

第22条〔思想及び良心の自由〕
思想及び良心の自由は、これを保障する。

第23条〔信教の自由〕
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行為に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、特定の宗派を振興し、又は弾圧してはならない。
4 いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

第24条〔学問の自由〕
学問の自由は、この憲法の理念の範囲内で、これを保障する。

第25条〔表現の自由〕
言論、出版、報道その他表現の自由は、この憲法の理念の範囲内で、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。

第26条〔知る権利〕
すべて国民は、国の安全及び公共の秩序並びに個人の尊厳を侵さない限り、一般に入手できる情報源から、情報を得る権利を有する。

第27条〔集会及び結社の自由〕
何人も、集会及び結社の自由を有する。ただし、憲法秩序の破壊、あるいは国民の諸権利の侵害を目的とし、具体的な活動に及びたる結社は、これを禁止する。
2 何人も、その意に反して結社に参加することを強制されない。

第28条〔居住及び移転の自由、外国移住・国籍離脱の自由、国外追放の禁止〕
何人も、居住及び移転の自由を有する。
2 すべて国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を保障される。
3 すべて国民は、正当な理由なくして、国籍を奪われ、外国に追放され、又は犯罪人として外国政府に引き渡されない。

第29条〔職業選択及び営業の自由〕
何人も、職業選択及び営業の自由を有する。

第30条〔私有財産所有の自由及び権利〕
何人も、財産を所有する自由及び権利を有する。
2 財産権の内容は、公共の利益に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、相当な補償の下に、これを公共の利益のために用いることができる。

第31条〔家庭の運営・婚姻における責任、国の家庭尊重保護の責務〕
家庭は、社会を構成する最も基本的な単位である。何人も、各自、その属する家庭の運営に責任を負う。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利と責任を有することを基本として、相互の協力により維持するものとする。
3 国は、家庭を尊重し、及びこれを保護するものとする。

第32条〔生存権、国の社会的使命〕
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、各人の人格の尊重の上に立って、社会福祉及び社会保障の向上及び増進に努めるものとする。
3 前項に関連して、心身に障害を持つ者、高齢者、妊産婦、母子家庭に対しては、国政の上で、特段の配慮を与えるものとする。
4 国は、公衆衛生の向上及び増進に努めるものとする。

第33条〔科学・芸術・文化振興の責務〕
国は、科学、芸術その他の文化の振興に努めるものとする。

第34条〔環境に関する権利及び責務〕
何人も、良好な環境を享受する権利を有するとともに、良好な環境を保持し、かつわれわれに続く世代にそれを引き継いでいく責務を負う。
2 国は、良好な環境の維持及び改善に努めるものとする。

35条〔教育を受ける権利、児童・年少者の健全育成、国の社会的使命〕
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する児童及び年少者に普通教育を受けさせる責務を負う。普通教育は、法律の定めるところにより、これを無償とする。
3 国は、児童及び年少者の徳性、知力、体力の向上を図り、もってその健全育成を図るべく、教育内容を決定し、その他特段の配慮をするものとする。
4 児童及び年少者は、これを酷使してはならない。

第36条〔勤労者の団結権〕
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

37条〔適正手続の保障、罪刑法定、事後法の禁止、一事不再理〕
何人も、法律の定める適正な手続によらなければ、その生命を奪われ、自由を制約され、もしくはその他の刑罰を科せられ、又はその他のいかなる不利益も受けることはない。
2 何人も、実行のときに適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑法上の責任を問われない。又、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われない。

第38条〔非人道的な刑罰・処遇の禁止〕
何人も、拷問その他いかなる非人道的な刑罰又は処遇も受けることはない。

第39条〔公務就任の要件、公務員選定罷免の権利及び責務、普通選挙・直接選挙の保障、投票の秘密の保障、公務員の性質〕
公務に就任する者は、日本国民であることを要する。
2 国会議員、地方公共団体の首長及びその議会の議員その他の公務員を選定し、及び不適任の公務員を罷免することは、国民固有の権利であり、かつ、その権利の行使は、公民としての責務である。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙、及び直接選挙を保障する。
4 すべて、選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関して、公的にも私的にも責任を問われない。
5 すべて公務員は、国民全体の奉仕者である。
6 公務員の権利及び責務については、その職務の性質に応じて、必要な最小限度の権利の制約又は責務の加重を受けることを妨げない。

第40条〔請願権〕
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、改正もしくはその廃止その他の事項について、平穏に請願する権利を有する。
2 何人も、前項に規定された請願を行ったことを理由として、いかなる差別も受けることがなく、また、いかなる不利益も被ることがない。

第41条〔国及び地方公共団体の賠償責任〕
何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方公共団体に、その賠償を求めることができる。

第42条〔遵法の責務〕
国民は、この憲法及び法律を遵守する責務を負う。

第43条〔納税の責務〕
国民は、法律の定めるところにより、納税の責務を負う。

第44条〔国家防衛の責務〕
国民は、国家を防衛する責務を負う。

第45条〔国家緊急事態下における協力の責務〕
すべて国民は、第八十八条に規定される国家緊急事態が宣言された場合には、内閣の命令に従い、内閣の活動に協力する責務を負う。

第46条〔公共財保守の責務〕
国民は、文化財その他の公共財を保守する責務を負う。


※ 第5章 統治権

第47条〔統治の正当性〕
国家統治に関するすべての権力は、国民に由来する。

第48条〔統治の主体、権力行使の方法、政党結成の保障〕
国民は、権力の行使に際して、正当な選挙を経た国会における代表を通じてこれを行う。
2 政党の結成は、国民の政治的意思の集約、形成及び国政への反映を図り、もって健全なる議会制民主主義を実現するため、これを保障する。政党の要件は、法律でこれを定める。
3 前二項の他、憲法改正が国民投票に附された場合、国民は、国家統治に関する最終的な意思を決定する。


第6章 国会

第49条〔国会の地位、立法権〕
国会は、行政、司法その他一切の国家機関より独立した、国民代表の府であり、立法権を行使し、予算案を議決し、国政を監督し、その他この憲法及び法律の定める権限を行う。

※第50条〔国会の構成〕
国会は、国民によって直接に選挙された議員よりなる単一の院をもってこれを構成する。

第51条〔議員の全国民代表性〕
国会議員は、全国民の代表者であり、全国民の利益を念頭においてその職務を行わなければならない。

第52条〔国会議員の資格及び選挙人の資格〕
国会の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。

第53条〔国会議員の選挙に関する事項、第三者機関の設置〕
選挙区、投票の方法、その他国会議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。ただし、選挙法の原案を作成するため、法律の定めるところにより、公平な第三者機関を設置しなければならない。

第54条〔国会議員の任期〕
国会議員の任期は、四年とする。ただし、解散の場合には、その期間満了前に終了する。
2 国会議員の任期は、国会議員の総選挙を行うに適しない緊急の事態が発生した場合においては、国会の議決で、緊急の事態の継続中、これを延長することができる。

第55条〔議員の就任宣誓〕
国会議員は、その就任に際し、次の宣誓を行わなければならない。
「私は、憲法及び法律を尊重擁護し、何人からも職務に関して約束もしくは贈与を受けず、つねに全力を尽くし、国家の発展と国民の利福の増進に努めることを誓う。」
2 宣誓を行うことを拒否し又は条件付の宣誓を行う者は、国会議員の地位を放棄したものとみなす。

※第56条〔国会議員の欠格事由〕
国会議員は、次に掲げる事由により、その地位を失う。
一 直接間接に、公有財産を購入又は賃借すること。
二 直接間接に、国又はその機関と、土木請負契約、物品納入契約又はその他法律が禁ずる契約を結ぶこと。
三 国又はその機関と契約関係にある営利企業の役員又は法律顧問となること。
四 国又はその機関を相手とする訴訟事件において、訴訟代理人又は弁護人となること。
五 第三者の利益を図るために、国又はその機関の事務の負担となるべき交渉をなし、又は交渉をなさしめること。
六 正当な理由なくして、会期中三分の一以上欠席すること。

第57条〔議員の歳費〕
国会議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
2 給与の額は、国会の議決でこれを増減することができる。ただし、増額の議決は、出席議員の三分の二以上の多数の賛成を必要とし、かつ、国会の総選挙を経て、次の国会の議員から効力を生ずるものとする。

※第58条〔国会の独立〕
国会議員の取り調べは、司法行政上の検察官より独立した独立検察官がこれを行う。
2 独立検察官は、国会の承認を得て、内閣がこれを任命する。
3 独立検察官に関する事項は、法律でこれを定める。
4 国会議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されない。
5 会期前に逮捕された議員は、国会の要求のある場合には、釈放されなければならない。

第59条〔議員の発言及び表決についての免責〕
国会議員は、国会内で行った発言、討論、又は表決について、国会外で責任を問われない。

第60条〔通常会〕
国会の通常会は、年に二回、これを召集する。

第61条〔臨時会〕
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。
2 前項の場合の他、国会の在籍議員の四分の一以上の要求があったときには、内閣は、臨時会の召集を決定しなければならない。

第62条〔国会の解散、特別会〕
国会が解散されたときは、解散の日から四十日以内に国会の総選挙が行われ、その総選挙の日から三十日以内に国会が召集されなければならない。

第63条〔資格争訟の審査〕
国会は、所属する議員の資格に関する争訟を審査する。
2 国会議員の議席を剥奪するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第64条〔定足数、表決〕
国会は、在籍議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 国会の議事は、この憲法に特別の規定がある場合を除き、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第65条〔議事の公開、秘密会、議事録、表決の記載〕
国会の議事は、公開とする。
2 前項にもかかわらず、出席議員の三分の二以上の多数により議決したときは、秘密会を開くことができる。
3 国会は、その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要するとみとめられるもの以外は、これを公表し、かつ一般に頒布しなければならない。
4 出席議員の五分の一以上の要求があれば、議員の表決は、これを議事録に記載しなければならない。

第66条〔役員の選任、国会規則、懲罰〕
国会は、その議長を指名し、その他の役員を選任する。
2 国会は、議事その他の手続、及び国会内の秩序を乱しあるいは刑事裁判にて有罪が確定した議員につき、これを懲罰することができる。
3 前項の場合、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第67条〔法律案の議決〕
法律案の提出は、国会の在籍議員数の四分の一以上の議員、又は内閣がこれを行う。
2 法律案は、この憲法に特別の規定がある場合を除き、国会で可決したとき法律となる。

第68条〔予算案の議決〕
予算案は、国会で議決されたとき予算となる。
2 国会は、予算案について、これを修正議決することはできない。

第69条〔条約承認案の議決〕
条約の締結に必要な国会の承認については、前条の規定を準用する。

第70条〔国会の国政調査権〕
国会は、国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言、並びに資料及び記録の提出を要求することができる。

第71条〔国務大臣の国会出席の権利及び義務〕
内閣総理大臣その他の国務大臣は、国会に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため国会に出席することができる。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁又は証言のために国会に出席を求められたときは、法律の定める場合を除き、出席しなければならない。

第72条〔弾劾裁判所〕
国会は、罷免の訴追を受けた司法裁判所の裁判官並びに憲法裁判所の裁判官を裁判するため、国会議員で組織する弾劾裁判所を設置する。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。


第7章 内閣

第73条〔内閣の地位、行政権〕
行政権は、内閣に属する。
2 内閣は、法律に基づいて、行政権を行使する。

第74条〔内閣の組織〕
内閣は、法律の定めるところにより、内閣総理大臣及びその他の国務大臣で、これを組織する。
2 内閣総理大臣は、国務大臣を統率する。
3 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、現に国防軍に属する者であってはならない。
4 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
5 内閣の決定は過半数決とする。反対の意見を有する国務大臣は、辞職しない限り、内閣の決定に賛成したものとみなす。

第75条〔内閣総理大臣の指名〕
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先立って、これを行う。

第76条〔国務大臣の任命及び罷免〕
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばなければならない。
2 内閣総理大臣は、国務大臣を任意に罷免することができる。

第77条〔内閣総理大臣の臨時職務代行者〕
内閣総理大臣は、内閣の成立と同時に、内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときに、臨時に内閣総理大臣の職務を行う国務大臣を指定しなければならない。

第78条〔国務大臣の宣誓〕
内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、就任に際し、次の宣誓を行う。
「私は、日本国の発展と日本国民の利福の増進のため、日本国の憲法及び法律を尊重擁護し、全力をあげて職務に専念することを誓う。」

第79条〔国務大臣の行為の制限〕
内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、その在任中、第五十六条第一号ないし第五号に規定する欠格事由の他、品位を損う行為を行ってはならない。

第80条〔内閣の国会解散権、内閣不信任決議の効果〕
内閣は、国会を解散することができる。
2 内閣は、国会で不信任の決議案が可決され、又は信任の決議案が否決されたときは、十日以内に国会を解散しない限り、総辞職しなければならない。
3 内閣に対する信任又は不信任の議決は、それが国会に提出されてから四十八時間を経過した後でなければ、これを行うことができない。

第81条〔内閣総理大臣の不在、新国会の召集と内閣の総辞職〕
内閣総理大臣が欠けたとき、または国会の解散の後に初めて国会の召集があったとき、内閣は総辞職しなければならない。

第82条〔総辞職後の内閣〕
第八十条二項及び前条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで、引き続き憲法の定める職務を行う。
2 前項の場合、内閣は、国会を解散することができない。

第83条〔内閣総理大臣の職務〕
内閣総理大臣は、内閣を代表して法律案その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。

第84条〔内閣総理大臣の統括権〕
内閣総理大臣は、行政各部を統括する。

第85条〔内閣の職務〕
内閣は、一般の行政事務の他に、次の事務を行う。
一 法律を誠実に執行し、行政事務を統括管理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によっては事後に国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従い、公務員に関する事務を掌理すること。
五 予算案を作成し、国会に提出すること。
六 法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 恩赦、刑の減免及び復権を決定すること。
八 栄典の授与を決定すること。

第86条〔法律・政令の署名〕
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

第87条〔行政情報の公開原則〕
行政情報は、基本的に国民の所有に属する。
2 内閣は、次に挙げる場合を除き、その統括する行政各部の情報について、これを公開しなければならない。
一 国家の安全保障を脅かすおそれのあるとき。
二 公共の秩序を害するおそれのあるとき。
三 善良の風俗を害するおそれのあるとき。
四 関係当事者の人格を害し、その私生活上の利益を害するおそれのあるとき。
3 行政情報の公開に関する手続は、法律でこれを定める。

第88条〔国家緊急事態〕
内閣総理大臣は、国家の独立と安全保障、又は国民の生活、身体もしくは財産に切迫した影響を及ぼす緊急事態が発生した場合において、国家緊急事態を宣言し、必要に応じて緊急命令を発することができる。ただし、緊急命令には、期限を付さなければならない。
2 前項の場合、国家緊急事態宣言並びに緊急命令については、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を得なければならない。
3 緊急を要する租税その他の公課、政府専売品の価格又は通貨に関する措置を必要とするときは、内閣は、国会の事前の承認なくして政令で緊急の措置を行うことができる。ただし、この措置は、その公布後、国会開会中は一週間以内に、国会閉会中又は国会解散中は次の会期において、国会の承認を求めなければならない。

第89条〔国務大臣の訴追〕
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。ただし、このために、訴追の権利が害されることはない。

第8章 裁判所

第90条〔裁判所の地位、司法権〕
すべて司法裁判権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置される下級裁判所に属する。

第91条〔行政機関の裁判〕
行政機関は、この憲法の定める場合を除いては、終審として裁判を行うことができない。ただし、前審として、法律で特殊な人、又は事件を管轄する行政裁判所を設置することを妨げない。

第92条〔裁判官の独立、身分保障〕
すべて裁判官は、その良心に従い、独立して自らの職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
2 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらない限り罷免されない。裁判官の懲戒は、行政機関が、これを行うことはできない。

第93条〔最高裁判所の裁判官、任期、定年、報酬〕
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める定員数のその他の裁判官で、これを組織する。
2 最高裁判所の長たる裁判官以外の最高裁判所裁判官は、内閣がこれを任命する。
3 最高裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。
4 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達したときに退官する。
5 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第94条〔下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬〕
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿により、 内閣が、これを任命する。
2 下級裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。
3 下級裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達したときに退官する。
4 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第95条〔最高裁判所の規則制定権〕
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護人、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を制定する権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を下級裁判所に委任することができる。

第96条〔裁判の公開〕
裁判の対審および判決は、公開の法廷でこれを行う。
2 裁判所が、次に掲げる理由により、裁判の公開が適当でないと決定した場合、対審は、公開しないでこれを行うことができる。
一 国家の安全保障を脅かすおそれのあるとき。
二 公共の秩序を害するおそれのあるとき。
三 善良の風俗を害するおそれのあるとき。
四 当事者の私生活上の利益を害するおそれのあるとき。


第9章 憲法裁判所

第97条〔憲法裁判所の地位、法令審査権〕
憲法裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する。
2 すべて憲法裁判所裁判官は、その良心に従い、独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
3 憲法裁判所の訴訟に関する手続、その他必要な事項は、法律でこれを定める。

第98条〔憲法裁判所への提訴〕
憲法裁判所は、法律、命令、規則又は処分について、国会の在籍議員数の三分の二以上の議員、又は内閣の申し立てがあった場合に、法律の定めるところにより憲法に適合するかしないかを審査する。
2 憲法裁判所は、具体的訴訟事件において、最高裁判所もしくは下級裁判所、又は行政裁判所が求める事項につき、法律の定めるところにより憲法に適合するかしないかを審判する。
3 憲法裁判所は、具体的訴訟事件の当事者が、最高裁判所の憲法裁判に異議がある場合、法律の定めるところにより、その異議申し立てについて審判する。

第99条〔判決の効力〕
憲法裁判所が、法律、命令、規則又は処分について、憲法に適合しないと決定した場合には、法律の定める場合を除き、何人もその決定に拘束される。
2 憲法裁判所の判決は、法律の定める場合を除き、その判決の公布の翌日から効力を生ずる。

第100条〔憲法裁判所裁判官の身分保障〕
憲法裁判所裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。憲法裁判所裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。

第101条〔憲法裁判所裁判官、任期、定年、報酬〕
憲法裁判所裁判官の定数は十五名とし、三分の一ずつ、国会議長、内閣総理大臣、最高裁判所長官が任命する。憲法裁判所の長たる裁判官は、十五名の裁判官の中から、国会の同意を得て、内閣がこれを指名する。
2 憲法裁判所の裁判官は任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達したときには退官する。
3 憲法裁判所の裁判官は、その就任に際し、厳粛に宣誓を行わなければならない。
4 憲法裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第102条〔兼職の禁止〕
憲法裁判所裁判官は、国会議員、国務大臣、司法裁判所の裁判官、その他の公務員職を兼ねることはできない。

第10章 財政

第103条〔財政の基本原則〕
国の財政は、国会の議決に基づいて、内閣が、これを処理する。
2 国は、健全なる財政の維持及び運営に努めなければならない。

第104条〔課税〕
国は、あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更する際には、法律、又は法律の定める条件によらなければならない。

第105条〔国費の支出、国の債務負担〕
国は、国費を支出し、又は債務を負担する際には、国会の議決に基づくことを必要とする。

第106条〔公金その他の公の財産の使用の制限〕
公金その他の公の財産は、公の支配に属しない慈善その他を目的とする団体に対して、その便益もしくは維持のため、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第107条〔予算案〕
内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その議決を得なければならない。
※2 内閣は、国会において議員が提出した法律案が可決されたときは、その法律の執行に必要な費用を補正予算案又は次の会計年度の予算案に計上しなければならない。

第108条〔継続費〕
内閣は、特別に複数年にわたって継続して国費を支出する必要のあるときは、継続費として国会の議決を得なければならない。

第109条〔予備費〕
内閣は、予見しがたい予算の不足に充当するために、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任において、これを支出することができる。
2 予備費の支出についてはすべて、内閣は、事後に国会の承認を得なければならない。

第110条〔予算不成立の場合の措置〕
会計年度の終了までに次年度の予算が成立しない場合には、内閣は、予算が成立するまでの間、次の目的のために必要な一切の支出をなすことができる。
一 法律によって設立された施設を維持し、並びに法律によって定まっている行為を実行するため。
二 法規上国に属する義務を履行するため。
三 前年度の予算ですでに承認を得た範囲内で、建築、調達及びその他の事業を継続し、又はこれらの目的に対して補助を継続するため。

第111条〔決算検査、会計検査院〕
国のすべての収入及び支出の決算は、会計検査院がこれを検査する。
2 内閣は、次の年度に、前項に規定する会計検査院による決算検査と併せ、国のすべての収入及び支出の決算を国会に提出し、その承認を得なければならない。
3 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

第112条〔財政状況の報告〕
内閣は、国会及び国民に対して、少なくとも毎年一回、定期に、国の財政状況について報告しなければならない。

第11章 地方自治

第113条〔地方自治の原則〕
地方公共団体は、国と協同して国民の福祉の増進に努めるものとする。
2 地方公共団体の運営及び組織に関する事項は、法律でこれを定める。

第114条〔地方議会、首長・議員の直接選挙〕
地方公共団体には、法律の定めるところにより、議会を設置する。
2 地方公共団体の首長及びその議会の議員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

第115条〔地方公共団体の公務員の欠格事由〕
地方公共団体の首長及びその議会の議員の欠格事由については、第五十六条の規定を準用する。

第116条〔地方公共団体の権能、条例制定権〕
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有する。
2 地方公共団体は、法律の範囲内で、条例を制定することができる。

第117条〔特別法の住民投票〕
特定の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票において、過半数の同意を得られなければ、これを制定することができない。

第118条〔国家緊急事態下における地方自治〕
第88条に規定される国家緊急事態が宣言された場合、法律の定めるところにより、地方公共団体は、その権限を停止し、内閣の直接の指揮の下に入るものとする。


第12章 改正

第119条〔憲法改正の手続、憲法改正の制限〕
憲法改正案の提出は、国会の在籍議員数の三分の一以上の議員、又は内閣がこれを行う。
2 この憲法の改正は、国会において在籍議員の三分の二以上の出席の上で、出席議員の三分の二以上の賛成による可決を必要とする。
3 前項の場合の他、この憲法の改正は、国会において在籍議員の三分の二以上の出席の上で、出席議員の過半数により、国会がこれを発議することができる。この場合、特別の国民投票、又は国会の定める選挙の際に行われる国民投票において、有効投票の過半数の賛成を必要とする。
4 憲法改正については、本条第二項に規定する改正案の可決、又は前項に規定する改正案の承認があったときには、天皇は、国民の名において、これを直ちに公布する。
5 日本国の主権が制限されている間、及び緊急事態宣言が布告されている間は、この憲法は、改正することができない。


第13章 最高法規

第120条〔最高法規〕
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、規則又は処分の全部又は一部は、その効力を有しない。

第121条〔条約及び国際法規の遵守〕
日本国が自ら締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する。


第14章 補則

第122条〔憲法施行期日、準備手続〕
この憲法は、公布の日から起算して三箇月を経過した日から、これを施行する。
2 この憲法を施行するために必要な法律の制定、国会議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続は、前項の期日より前に、これを行うことができる。

第123条〔経過規定―国会未成立の場合の措置〕
この憲法の施行の際、新国会がまだ成立していないときは、その成立までの間、従来の国会が両院合同会議を開き国会としての権限を行う。

第124条〔同前―憲法裁判所裁判官の任命〕
内閣総理大臣、衆議院議長、最高裁判所長官は、この憲法の公布後、施行までの間に、この憲法の定めるところにより、憲法裁判所裁判官を任命する。憲法裁判所裁判官は、この憲法の施行後、その権限を行う。

第125条〔同前―公務員の地位〕
この憲法施行の際、現に在職する国務大臣、裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相当する地位がこの憲法で認められている者は、法律で特別の規定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失うことはない。ただし、この憲法によって、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失う。