2017

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草案<一部>

細野豪志

HOSONO Gōshi

細野豪志「教育、緊急事態への対応、地方自治 現実的な憲法改正案を提示する」『中央公論』(2017年5月)掲載。1


1 二十一世紀型の教育を受ける権利

第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、社会的身分又は経済的地位によって差別されることなく、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子どもにすべての国人にとって共通に必要とされる一般的かつ基本的な教育を受けさせる義務を負う。
3 障がいを有する子どもは、その尊厳が確保され、共に学ぶ機会の確保に配慮されつつ、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育を受ける権利を有する。
4 乳幼児期の教育から中等教育に至るまでの公の性質を有する教育は、法律の定めるところにより、無償とする。
5 高等教育は、法律の定めるところにより、能力に応じ、すべての国民に対してこれを利用する機会が与えられるものとする。国は、その教育環境の整備に努めなければならない。

第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 


2 緊急時における立憲主義の確立

第46条の2
前二条の規定にかかわらず、自然災害が発生その他の事情により選挙を適正に行うことが著しく困難であると認められる場合において議員の任期満了までの期間が九十日以内であるときは、各議院は、その議決により、その議員の任期を百八十日を超えない範囲内で延長することができる。

第54条
1〜3 略
4 衆議院が解散された場合において自然災害の発生その他の事情により選挙を適正に行うことが著しく困難である旨の参議院の緊急集会における議決があったときは、第一項中「四十日以内」とあるのは「二百二十日を超えない範囲内で参議院の緊急集会において議決により定める日」とする。

第56条
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。ただし、自然災害の発生その他の事情により総議員の三分の一以上の出席が著しく困難であると認められるときは、法律の定めるところにより各議院の議長又はあらかじめ指定する議員が定める数以上の議員の出席を持って、議事を開き議決することができる。
2 略

第69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職しなければならない。
2 衆議院は、前項の場合を除くほか、解散されない。


3 自律分散型国家を目指して

第92条
地方自治は、住民の福祉の増進を図ることを基本とし、住民の意思に基づき、地方自治体によって自主的かつ自立的に行われなければならない。
2 国はその本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政ができる限り身近な地方自治体にゆだねることを基本とする。

第93条
  地方自治体の種類は、法律で定める。
2 地方自治体の配置分合は、当該自治体の意思に基づいて行われなければならない。
3 地方自治体には、立法機関及び地方政府を設置する。
4 地方自治体の立法機関は、議会又はそれに代る住民意思を反映する機関の構成員は、その地方自治体の住民である国民が、直接これを選挙する。
5 地方自治体の行政権は、地方政府に属し、地方政府は行政を執行する長その他の行政組織によって構成される。
6 地方自治体の立法機関の権限及び組織、地方自治体の行政を執行する長の選任方法及び権限並びにその他の行政組織及びその権限並びに立法機関と地方政府の関係は、前条に定める地方自治の基本原則に基づき、その準則を法律で定める。ただし、条例でその地方自治体に関しこれと異なる定めるをすることができる。

第94条
  地方自治体の立法機関は、当該地方自治体の事務に関し条例を制定することができる。
2 地方自治体の財政を処理する権限は、地方自治体の立法機関の議決に基づいて、これを行使しなければならない。
3 地方自治体は、条例で定めるところにより、地方税を新たに課し、又は法律で定められた地方税の税率等を更新することができる。
4 国は地方自治体間の行政の最低限度の公平性を確保するため、地方自治体の事務の自立性に配慮しつつ、必要な財政上の措置を講ずる。

第94条の2
  第九十三条四項の選挙において選挙人の資格を有する者は、法律の定めるところにより、条例の制定及び改廃、議会の解散その他の請求をすることができる。
2 地方自治体の住民は、法律の定めるところにより、住民監査請求を行うことができる。監査の結果に不服な場合又は監査の結果講ずべきこととされた措置が講じられないときは、裁判所に住民訴訟を提起することができる。
第九十四条の三 地方自治体の住民は、法律の定めるところにより、当該地方自治体に関する重要事項に関し、住民投票を求めることができる。
2 地方自治体は、前項の住民投票の請求があったときは、住民投票を行わなければならない。
3 地方自治体の立法機関及び地方政府は、住民投票の結果を尊重しなければならない。

第95条の2
  国と地方自治体又は地方自治体間に権限について係争がある場合には、国地方係争処理院がこれを処理する。
2 国地方係争処理院の組織及び権限は、法律でこれを定める。