2012

|

草案<全文>

日本青年会議所

Nippon Seinen Kaigisho

「日本国憲法草案」1
2012年10月12日


前文

日本国は、四方に海を擁し、豊かな自然に彩られた美しい国土のもと、万世一系の天皇を日本国民統合の象徴として仰ぎ、国民が一体として成り立ってきた悠久の歴史と伝統を有する類まれな誇りある国家である。

我々日本国民は、和を貴び、他者を慮り、公の義を重んじ、礼節を兼ね備え、多様な思想や文化を認め、独自の伝統文化に昇華させ、豊かな社会を築き上げてきた。

日本国は、自主自立の主権国家としての権利を行使するとともに、責務を全うし、互敬の精神をもとに日本を含む地球上のあらゆる地域から貧困と殺戮をなくし、全世界の平和に貢献すると同時に、国際社会を率先して牽引すべき国家であると確信する。

我々日本国民は、国の主権者として、悠久の歴史と誇りある伝統を受け継ぎ、現在及び未来へ向け発展・継承させるために、五箇条の御誓文以来、大日本帝国憲法及び日本国憲法に連なる立憲主義の精神に基づき、ここに自主的に新日本国憲法を制定する。


第1章 天皇

第1条〔天皇の地位〕
天皇は、日本国の元首であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は将来にわたって不変のものである。

第2条〔皇位の継承〕
皇位の継承は世襲制であり、皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

3条〔天皇の権能〕
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為を行う。
2 天皇は、皇室典範の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
3 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣が助言し、かつ、その責任を負う。

第4条〔摂政〕
皇室典範に定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。

第5条〔天皇の任命権〕
天皇は、国民議院の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

第6条〔天皇の国事行為〕
天皇は、内閣の助言に基づき、次の国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 国民議院を解散すること。
四 国民議院の議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定める官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を発すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 諸外国の元首を接遇し、大使及び公使を接受する。
十 儀式及び祭祀を行うこと。


第2章 国民の権利及び義務

第7条〔国民の要件〕
日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

8条 国民の基本的な権利〕
国民は、国家により個人として、又は共同体の一員として尊重され、基本的な権利の享有を妨げられない。この憲法が保障する基本的な権利は、現在及び将来の国民に与えられ、国民は、この基本的な権利を、不断の努力によって保持し、子孫に継承する責務を負う。
2 国民は、前項に掲げる権利を濫用してはならず、常に公の利益及び秩序を保つためにこれを利用する責務を負う。
3 国民の基本的な権利及びその他の権利については、国の安全、公の秩序の維持、及び公共の利益を損なわない限り、又はこの憲法第九章に定める非常事態の場合を除き、最大限に尊重される。

第9条〔共同の責務〕
国民は、国及び共同体の利害並びに世代を越えた利害等を、利他の精神をもって一体となり、解決する共同の責務を負う。

第10条〔国民主権〕
国民は、国の主権者として、国家の運営に参画する権利を有する。

第11条〔公務員の選定及び罷免に関する権利〕
国会議員、地方自治体の長及びその議会の議員その他の公務員を選定し、及びこれを罷免することは、日本国民の権利である。
2 公務員は、日本国に忠誠を誓い、日本国の基本的秩序を尊重し、私欲を離れ、国益を増進し、国及び国民の権利を守る義務を負う。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべての選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。

第12条〔法の下の平等〕
国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 栄誉、勲章、その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。

第13条〔請願権〕
国民は、損害の救済、公務員の罷免、法律、条例、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第14条〔国家賠償請求権〕
何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方自治体に、その賠償を求めることができる。

第15条〔思想及び良心の自由〕
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第16条〔信教の自由〕
信教の自由は、これを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 国は、国民に対して、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制してはならない。
3 国は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育及び特定の宗教に対する援助、助長又は促進となるようならない。

第17条〔表現の自由〕
集会、結社及び言論、出版その他の一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第18条〔私事に干渉されない権利、人格権及び名誉権〕
何人も、自己の私事についてみだりに干渉されることのない権利、並びにその人格及び名誉を尊重される権利を有する。

第19条〔居住、移転、外国への移住及び国籍離脱の自由〕
何人も、居住及び移転の自由を有する。
2 国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。
 

第20条〔職業選択及び営業の自由〕
何人も、職業選択及び営業の自由を有する。

第21条〔学問の自由〕
学問の自由は、これを保障する。

第22条〔婚姻及び家族に関する原則〕
家族は、共同体を構成する基礎であり、何人も、その属する家族の維持及び関係の強化に努めなければならない。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、相互の協力により、維持されなければならない。
3 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、婚姻並びに離婚及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳及び両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第23条〔生存権〕
国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、国民が相互扶助を通じても、自らの力で生活できない場合、その生活を支援しなければならない。

第24条〔環境権〕
何人も、良好な環境を享受する権利を有し、その保全に努める義務を負う。
2 国は、良好な環境を保全する施策を行わなければならない。

第25条〔教育を受ける権利及び義務〕
国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に家庭教育を施し、普通教育を受けさせる義務を負う。公的機関による義務教育は、これを無償とする。

第26条〔社会貢献の責務〕
国民は、その受けた教育の成果を活かして、社会貢献に努めなければならない。

第27条〔文化の尊重〕
国民は、わが国の歴史、伝統及び文化を尊重し、子孫に継承する責務を負う。
2 国は、歴史、文化及び芸術の保護及び育成を奨励しなければならない。

第28条〔勤労の権利及び義務〕
国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤務条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第29条〔労使の協調〕
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
2 労使は互いに協調し、社会への貢献並びに勤労者の福利を増進しなければならない。

第30条〔財産権〕
財産権は、有体又は無体を問わず、これを保障する。
2 私有財産は、適正な補償のもとに、これを公のために用いることができる。
3 国民は、いかなる場合においても、国益を損なうような財産権の行使をしてはならない。

第31条〔領土等を保全する権利及び義務〕
国民は、日本国の主権を保持するため、領土、領海及び領空を保全する権利及び責務を負い、国は、その義務を負う。

第32条〔納税の義務〕
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

第33条〔法定手続の保障〕
何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

第34条〔裁判を受ける権利〕
何人も、憲法の定める裁判所において、原則として公開により、公正な裁判を受ける権利を有する。

第35条〔逮捕の要件〕
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第36条〔自白強要の禁止、自白の証拠能力の限界〕
裁判所は、強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白を証拠とすることはできない。

第37条〔遡及処罰の禁止〕
何人も、実行のときに適法であった行為又はすでに無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。又、同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。

第38条〔刑事補償請求権〕
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の判決を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

第39条〔犯罪被害者の救済〕
生命又は身体を害する犯罪行為による被害者又はその遺族は、法律の定めるところにより、国から救済を受けることができる。

第40条〔外国人の権利〕
日本国に居住する外国人は、文言上又は権利の性質上、日本国民のみに認められるものを除いて、この憲法が保障する権利を享受する。


第3章 安全保障

第41条〔自衛権〕
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、他国へのいかなる侵略をも否認する。
2 日本国は、主権国家として、その独立及び国益、並びに、国民の生命及び財産を守るため、国際法に基づき、日本国及び日本国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃に対し、個別的及び集団的な自衛権を有し、行使することができる。

第42条〔軍隊〕
国は、前条の目的を達成するため、軍隊を保持する。
2 軍隊の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属する。
3 軍隊がその自衛権を行使するにあたっては、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を得なければならない。
4 軍隊は、国際平和維持のための国際機関における共同活動に参加することができる。
5 軍事に関わる裁判を行うため、法律の定めるところにより、軍事裁判所を設ける。但し、軍事裁判においても、第三十三条ないし第三十八条の適用を受けるものとする。


第4章 国会

第43条〔国会の地位〕
立法権は、国会に属する。

第44条〔両院制〕
国会は、国民議院及び評議院の両議院でこれを構成する。

第45条〔両議院の組織〕
国民議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織し、評議院は、法律に定める自治体の代表でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

第46条〔議員及び選挙人の資格〕
両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

第47条〔国民議院の議員の任期〕
国民議院の議員の任期は、四年とする。但し、国民議院の解散の場合には、その期間満了前に終了する。

第48条〔評議院議員の任期及び議決権〕
評議院議員の任期は、その属する自治体の長の任期に準じる。

第49条〔選挙等に関する事項〕
選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙又は選定に関する事項は、法律でこれを定める。

第50条〔両議院議員の兼務の禁止〕
何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

第51条〔議員の歳費〕
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

第52条〔議員の不逮捕特権〕
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第53条〔議員の発言及び表決の無答責〕
両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。

第54条〔常会〕
国会の常会は、毎年一回これを召集する。
2 常会の会期は、法律で定める。

第55条〔臨時会〕
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第56条〔国民議院の解散及び国民議院の議員の総選挙、特別会及び緊急集会〕
国民議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、国民議院の議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別会を召集しなければならない。
2 国民議院が解散されたときは、評議院は、同時に閉会となる。但し、内閣総理大臣は、国に緊急の必要があるときは、評議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項の但し書きの緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、国民議院の同意がない場合には、その効力を失う。

第57条〔資格争訟の裁判〕
両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第58条〔定足数及び表決〕
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第59条〔会議の公開、秘密会、会議録、表決の記載〕
両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。
3 各議員の表決は、出席議員の五分の一以上の要求があれば、これを会議録に記載しなければならない。

第60条〔役員の選任、議院規則及び懲罰〕
両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第61条〔法律案の議決〕
法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、国民議院で可決したとき法律となる。但し、評議院の同意を必要とする法律案は、両議院で可決したとき法律となる。
2 評議院の同意を必要とする法律案は、次の事項と定める。
一 地方自治体の租税に関する法律案
二 地方自治体の官庁の組織及び行政手続を規律する法律案
三 地方自治体の固有事務として執行する法律案
四 国の予算案五条約の締結

第62条〔特定の法律案に関する評議院の優越〕
前条第二項第一号ないし第三号に掲げる法律案は、先に評議院に提出しなければならない。
2 評議院で先議された法律案について、国民議院で評議院と異なった議決をしたときに、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は国民議院が、評議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、評議院の議決を国会の議決とする。

第63条〔予算案に関する国民議院の優越〕
予算案は、先に国民議院に提出しなければならない。
2 予算案について、評議院で国民議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は評議院が、国民議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、国民議院の議決を国会の議決とする。

第64条〔条約締結に関する国民議院の優越〕
条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

第65条〔議院の国政調査権〕
両議院は、国政に関する調査を行い、その総議員の三分の一以上の要求があれば、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

第66条〔国務大臣の議院出席の権利及び義務〕
内閣総理大臣その他の国務大臣は、いつでも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第67条〔弾劾裁判所〕
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

第68条〔政党〕
政党は、国民の政治的意思形成を主導することを役割とし、国益及び国家の主権の尊重に努めなければならない。
2 政党は、国民議院の選挙に際し、国策及び施政の基本方針を明示しなければならない。
3 政党に関する要件は、法律でこれを定める。


第5章 内閣

第69条〔行政権〕
行政権は、内閣に属する。

第70条〔内閣の組織、国会に対する責任〕
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

第71条〔内閣総理大臣の指名〕
内閣総理大臣は、国民議院の議員の中から国民議院の議決でこれを指名する。この指名は、他のすべての案件に先立って行う。

第72条〔国務大臣の任免及び罷免〕
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国民議院の議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

第73条〔内閣総理大臣の解散権〕
内閣総理大臣は、国民議院を解散するよう、天皇に助言することができる。

第74条〔内閣不信任決議の効果〕
内閣は、国民議院で不信任の決議案が可決され、又は信任の決議案が否決されたときは、十日以内に国民議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

第75条〔内閣総理大臣が欠けたとき及び新国会の召集に伴う内閣の総辞職〕
内閣総理大臣が欠けたとき、又は国民議院の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職しなければならない。

第76条〔内閣総理大臣の臨時代理〕
内閣総理大臣に事故があるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。

第77条〔総辞職後の内閣の職務〕
前三条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。

第78条〔内閣総理大臣の職務〕
内閣総理大臣は、内閣を代表して法律案その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

第79条〔内閣の職務〕
内閣は、一般行政事務のほか、次の職務を行う。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。但し、当該処理に際しては、国益を保持するよう努めなければならない。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を得ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従い、公務員に関する事務を掌理すること。
五 法律案を国会に提出すること。
六 予算案を作成して、国会に提出すること。
七 法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
八 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

第80条〔法律及び政令への署名〕
法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

第81条〔国務大臣の特権〕
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は害されない。


第6章 裁判所

第82条〔司法権と裁判官の職務の独立〕
司法権は、最高裁判所及び憲法裁判所並びに法律の定めるところにより設置する下級裁判所及び軍事裁判所に属する。

第83条〔特別裁判所及び裁判官の職務の独立〕
前条に定める憲法裁判所及び軍事裁判所は、通常の裁判所と区別した特別の裁判所とする。
2 行政機関は、終審として裁判を行うことができない。
3 すべての裁判官は、その良心に従い独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

第84条〔憲法裁判所の法令審査権〕
憲法裁判所は、条約、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する。

第85条〔憲法裁判所の違憲判断の効力〕
憲法裁判所が、条約、法律、命令、規則又は処分について、憲法に適合しないと決定した場合には、その決定は、国を拘束する。

第86条〔最高裁判所の規則制定権〕
最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
4 最高裁判所は、憲法裁判所及び軍事裁判所に関する規則を定める権限を、原則としてそれぞれの裁判所に委任しなければならない。

第87条〔最高裁判所及び憲法裁判所の裁判官、任期、報酬〕
最高裁判所及び憲法裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所及び憲法裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達したときに退官する。
3 最高裁判所及び憲法裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
4 最高裁判所及び憲法裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。
5 前項の審査において、罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。

第88条〔下級裁判所及び軍事裁判所の裁判官、任期、報酬〕
下級裁判所及び軍事裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。
2 下級裁判所及び軍事裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達したときには退官する。
3 下級裁判所及び軍事裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第89条〔裁判官の身分保障〕
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務をとることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。

第90条〔裁判の公開〕
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の利益及び秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第2章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、原則としてこれを公開しなければならない。


第7章 財政

第91条〔財政の基本原則〕
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない。

第92条〔租税法律主義〕
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

第93条〔国費の支出及び債務負担〕
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

第94条〔予算案、継続費〕
内閣は、次の会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を得なければならない。
2 会計年度の開始前に前項の議決がなされなかったときは、内閣は、法律の定めるところにより、同項の議決を得るまでの間、必要な支出をする事ができる。
3 前項の規定による支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
4 特別に継続して支出する必要があるときは、年限を定め、継続費として国会の議決を得なければならない。

第95条〔予備費〕
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

第96条〔皇室財産、皇室の費用〕
皇室財産は、国に属することを原則とする。国庫より支出される皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を得なければならない。

第97条〔公の財産の支出及び利用の制限〕
公金その他の公の財産は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えて、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、支出し又はその利用に供してはならない。

第98条〔決算検査、会計検査院〕
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

第99条〔財政状況の報告〕
内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。


第8章 地方自治(地方自治の基本原則)

第100条〔地方自治の基本原則〕
地方自治は、地域の住民たる国民の参画及び団体による自治を基本とする。
2 地方自治体の組織は、広域自治体及び基礎的自治体とする。
3 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を享受する権利を有し、それに伴う負担を分担する義務を負う。

第101条〔国及び地方自治体の相互協力〕
地方自治体は、国益及び地域の住民の利益を追求し、国と相互に協力しなければならない。

第102条〔地方自治体の機関とその直接選挙〕
地方自治体には、法律の定めるところにより、条例その他地方自治体に関わる重要事項の議決機関として、議会を設置する。
2 地方自治体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、その地方自治体に居住する日本国民が、直接選挙する。

第103条〔地方自治体の権能〕
地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の趣旨に反しない限り、条例を制定することができる。
2 地方自治体は、その権能を行使するために、条例により租税を課すことができる。

第104条〔地方自治体の財務〕
地方自治体の経費は、条例の定めるところによる租税及びその地方自治体が所有する財産をもって、財源に充てることを基本とする。又、その財政は、健全に維持及び運営されなければならない。


第9章 非常事態

第105条〔非常事態の宣言〕
内閣総理大臣は、わが国に対する他国からの武力行使、他国からの教唆に伴う内乱、大規模内紛等、大規模な自然災害その他国家の非常事態と合理的に認められる場合において、閣議による承諾を得た上で、非常事態の宣言をすることができる。
2 前項に定める非常事態の宣言又はその解除は、事前に又は事後においては、当該事態の回復状況に鑑みて、法律の定めるところにより、合理的かつ速やかな期間内に、国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項に定める非常事態が回復した場合、又は前項の国会の承認が得られなかった場合には、速やかに非常事態の宣言を解除しなければならない。

第106条〔非常事態の宣言の効果〕
前条第一項に定める非常事態の宣言がなされた場合は、内閣は、国民の生命及び財産等の安全を維持する目的のために必要な範囲において、この憲法第2章に定める国民の権利を制限する措置をとることができる。但し、内閣は、当該事態が回復した場合は、速やかに当該措置を解除しなければならない。
2 非常事態の宣言がなされた場合は、何人も、前項の目的を達成するために、内閣のとった措置等に基づく指示等に対して、最大限協力する義務を負う。
3 非常事態の宣言がなされた場合は、その宣言が解除されるまでの間、国会議員の任期は、原則として延長されるものとし、国民議院は、解散されないものとする。国会が休会中の場合は、速やかに召集する。


第10章 改正

第107条〔憲法改正の手続〕
この憲法の改正は、内閣、法律で定める数の国会議員、又は国会に設置された憲法審査会によって発議され、各議院の総議員の過半数の賛成を経て、国民に提案して、その承認を得なければならない。
2 前項の国民の承認には、法律の定める特別の国民投票において、有効投票の過半数の賛成を必要とする。
3 憲法改正について前項の承認を得たときは、天皇は、国民の名で、直ちにこれを公布する。
4 他国による日本国の占領下、又はこの憲法第九章に定める非常事態の宣言下において、この憲法を改正することはできない。


第11章 最高法規

第108条〔憲法の最高法規性、条約及び国際法規の遵守〕
この憲法は、国の最高法規であって、その条文に反する条約、法律、条例、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

第109条〔国旗及び国歌〕
日本国の国旗は日章旗であり、国歌は君が代である。

第110条〔憲法尊重擁護義務〕
天皇又は摂政及び内閣総理大臣、国務大臣、国会議員、地方自治体の長及びその議会の議員、裁判官その他の公務員は、国民とともに、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。