2004

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草案<全文>

PHP総合研究所

PHP Sōgō Kenjyūjo

「二十一世紀日本国憲法私案」1
2004 年11月1日


前文

日本国の主権者である日本国民は、自由と民主主義、人権尊重の原則のもと、日本国の歴史と伝統を継承発展させつつ、国の安全、国内秩序の平穏、国民福祉の向上をはかるとともに、諸国民の繁栄と世界平和の実現に積極的に貢献することを宣言する。

この憲法は、日本国民の総意によって制定されたものであり、日本国民が遵守すべき日本国の最高法規である。


第1章 国民主権

第1条〔主権の所在〕
日本国の主権は、日本国民に存する。
2 日本国民は、日本国の独立と主権を守る権利と義務を有する。

第2条〔主権の行使〕
日本国民は、正当に選出された、立法府の議員、行政府の長ならびに裁判官を通じて、その主権を行使する。

第3条〔国民の要件〕
日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第4条〔基本的人権の享有〕
国民は、すべての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

第5条〔自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止〕
この憲法が保障する自由および権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならず、常に公共の利益のためにこれを利用する責任を負う。

第6条〔個人の尊重・幸福追求権・公共の利益〕
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については、公共の利益に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限尊重されなければならない。

第7条〔法の前の平等〕
すべて国民は、法の前に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。

第8条〔思想および良心の自由〕
思想および良心の自由は、これを侵してはならない。

第9条〔信教の自由〕
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式または行事に参加することを強制されない。
3 国および公共団体ならびにその組織は、特定宗教を布教・宣伝するいかなる活動もしてはならない。
4 いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。

第10条〔集会・結社の自由〕
集会、結社の自由は、これを保障する。

第11条〔表現の自由と検閲の禁止〕
表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。

第12条〔プライバシーの保護〕
何人も、個人の秘密や私生活にかかわる情報は、公共の利益に反する場合を除き、これを侵してはならない。
2 通信の秘密は、これを侵してはならない。

第13条〔知る権利と機密情報の保護〕
国民は、公的情報を知る権利を有する。ただし、国防・外交・公安上の機密情報は、法律の定めによって保護される。

第14条〔居住・移転および職業選択の自由、外国移住および国籍離脱の自由〕
何人も、公共の利益に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する。
2 国民は、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を有する。
3 国民は、正当な理由なくして、国籍を奪われ、外国に追放され、または犯罪人として外国政府に引き渡されない。

第15条〔学問の自由〕
学問の自由は、これを保障する。

第16条〔家族生活における個人の尊厳と男女の平等〕
婚姻は、本人の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、婚姻ならびに離婚および家族に関するその他の事項に関して、法律は、個人の尊厳と男女の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第17条〔生存権、国の社会的使命〕
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、社会福祉の向上、社会保障の充実および公衆衛生の増進に努めなければならない。

第18条〔環境に関する権利と義務〕
何人も、良好な環境を享受する権利を有する。
2 国および国民は、将来の世代に対して、良好な環境の維持および調和ある改善に努める義務を有する。

第19条〔教育を受ける権利、教育の義務〕
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子どもに基本教育を受けさせる義務を負う。公的機関によるこの教育は、これを無償とする。

第20条〔勤労の権利および義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止〕
すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第21条〔勤労者の団結権〕
勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第22条〔財産権〕
財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の利益に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、相当の補償の下に、これを公共のために用いることができる。

第23条〔納税の義務〕
国民および日本国に居住するすべてのものは、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

第24条〔公務員の本質、公務員選定罷免権、普通選挙の保障、秘密投票の保障〕
すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
2 公務員を選定し、およびこれを罷免することは、国民固有の権利である。
3 憲法ならびに法律によって定められた種類の公務員の選出については、成年者による普通選挙を保障する。
4 選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。

第25条〔請願権〕
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令または規則の制定、廃止または改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、またかかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第26条〔国および公共団体の賠償責任〕
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国または公共団体に、その賠償を求めることができる。

第27条〔法定手続きの保障〕
何人も、法律の定める手続きによらなければ、いかなる不利益な処分も刑罰も科せられない。

第28条〔裁判を受ける権利〕
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する。

第29条〔逮捕の要件〕
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する裁判官が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第30条〔抑留・拘禁の要件〕
何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人を依頼する権利を与えられなければ、抑留または拘禁されない。
2 何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人およびその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第31条〔住居の不可侵〕
何人も、第二十九条の場合を除いては、正当な理由に基づいて裁判官が発する令状によらなければ、その住居および所持品について、侵入、捜索および押収を受けることはない。
2 捜索または押収は、捜索する場所および押収する物を明示する各別の令状によらなければならない。

第32条〔拷問および残虐刑の禁止〕
拷問および残虐な刑罰は、これを禁ずる。

第33条〔刑事被告人の権利〕
刑事事件において、被告人は、裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、また、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自ら弁護人を依頼することができないときは、代わって裁判所がこれを任命する。

第34条〔不利益な供述、自白の証拠能力〕
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問もしくは脅迫による自白または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科せられない。

第35条〔遡及処罰の禁止・一事不再理〕
何人も、実行の時に適法であった行為または既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われず、また、同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。

第36条〔刑事補償〕
何人も、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国に補償を求めることができる。


第3章    天皇

第37条〔天皇の地位〕
天皇は、日本国の元首であり、日本国の永続性をあらわすとともに日本国と日本国民を統合する象徴として日本国を代表する。

第38条〔皇位の継承〕
皇位は、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、世襲される。

第39条〔天皇の国事行為に対する内閣総理大臣の助言と承認〕
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣総理大臣の助言と承認を必要とし、内閣総理大臣が、その責任を負う。

40条〔天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任、摂政〕
天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、皇室典範の定めるところにより摂政を置き、その国事に関する行為を委任することができる。
3 摂政は、第二項に基づき、天皇の名で国事に関する行為を行う。

第41条〔天皇の任命権〕
天皇は、国会による指名に基づき、国民代表議院議長ならびに州代表議院議長を任命する。
2 天皇は、投票資格を有する国民の直接投票による指名に基づき、内閣総理大臣ならびに内閣副総理大臣を任命する。
3 天皇は、内閣総理大臣による指名と国会の承認に基づき、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

第42条〔天皇の国事行為〕
天皇は、次の国事に関する行為を行う。
一 条約、憲法改正、国の法律ならびに政令を公布すること。
二 国会召集の詔書を発すること。
三 国民代表議院の解散詔書を発すること。
四 国民代表議院議員の総選挙および州代表議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 内閣総理大臣および内閣副総理大臣指名のための国民直接投票の施行を公示すること。
六 国務大臣および法律の定めるその他の公務員の任免ならびに外交使節に対する全権委任および大使、公使の信任を認証すること。
七 批准書および法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
八 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を認証すること。
九 栄典の授与を認証すること。
十 外国の大使および公使を接受すること。
十一 国賓を接遇すること。
十二 文化および芸術の奨励を行うこと。
十三 儀式を行うこと。


第4章    国会

第43条〔国会の立法権〕
国会は、次の事項に関し、立法権を有する。
国防、外交、通商、対外経済協力、通貨・通貨制度、金融、全国的課税、関税、資金の借入、年金、医療保険、失業保険、文化財保護、出入国管理、帰化、国の裁判所、国の検察、刑務所、刑事法、治安維持、交通、航海、航空、検疫、特許、著作権、高等基礎研究、全国統計調査、度量衡、その他の全国統一基準・規格。
2 前項および第94条に明記されていない事項については、国会でその権限の帰属を決定する。

第44条〔両院制〕
国会は、国民代表議院および州代表議院の両議院で構成する。

第45条〔両議院の組織〕
国民代表議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 州代表議院は、各州を代表する選挙された議員で組織する。ただし、各州から選出される議員は同数とする。
3 両議院の議員定数、選挙区、議員候補者の資格、投票人の資格、投票の方法、その他選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

第46条〔国会議員の任期と定年〕
国民代表議院議員の任期は、四年とする。ただし、国民代表議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
2 州代表議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
3 議員の定年は、法律によってこれを定める。

第47条〔兼職の禁止〕
何人も、国・地方公共団体を問わず、同時に二つ以上の議院の議員たることはできない。
2 国会議員は、国・地方公共団体を問わず、その任期中にいかなる行政府ならびに司法府の職にもつくことができない。

第48条〔議員の歳費〕
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

第49条〔議員の不逮捕特権〕
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第50条〔議員の発言・表決の責任〕
両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任は問われない。

第51条〔役員の選任、議院規則・懲罰〕
両議院は、各々その議長を指名し、その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続きおよび内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上による議決を必要とする。

第52条〔議員の資格争訟〕
両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の資格を失わせるには、出席議員の三分の二以上による議決を必要とする

第53条〔常会〕
国会の常会は、毎年一回これを召集する。

第54条〔臨時会〕
内閣総理大臣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。また、いずれかの議院の議長ならびに在籍議員の四分の一以上の要求があれば、内閣総理大臣は、その召集を決定しなければならない。

第55条〔国民代表議院の解散に伴う国会の召集〕
国民代表議院が解散されたときは、解散の日から五十日以内に、国民代表議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から二十日以内に、内閣総理大臣は国会を召集しなければならない。
2 国民代表議院が解散されたときは、州代表議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣総理大臣ならびに州代表議院の議長は、国に緊急の必要があるときは、州代表議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項の但し書きの緊急集会においてとられた措置は、臨時のものであって、次の国会開催の後十日以内に、国民代表議院の同意がない場合には、以後その効力を失う。

第56条〔定足数、表決〕
両議院は、各々その在籍議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

第57条〔会議の公開、会議録、表決の記載〕
両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議録を保存するとともに、これを公表し、かつ一般に頒布しなければならない。ただし、秘密会の会議録の公開については、法律で定める。
3 出席議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

第58条〔法律案の議決、国民代表議院の優越〕
法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 国民代表議院で可決し、州代表議院でこれと異なった議決をした法律案は、国民代表議院で出席議員の三分の二以上で再び可決した場合に、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、国民代表議院が、両議院の協議会の開催を求めることを妨げない。
4 一方の議院が、もう一方の議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に議決しないときは、その法律案を否決したものとみなす。

第59条〔国民代表議院の予算先議、予算議決に関する国民代表議院の優越〕
予算案は、さきに国民代表議院に提出されなければならない。
2 予算案について、州代表議院で国民代表議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開くこととする。なお、意見が一致しないとき、または州代表議院が、国民代表議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に議決しないときは、国民代表議院の議決を国会の議決とする。

第60条〔条約の承認に関する国民代表議院の優越〕
条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

第61条〔議院の国政調査権〕
両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭および証言ならびに記録の提出を要求することができる。

第62条〔閣僚の議院出席の権利と義務〕
内閣総理大臣、内閣副総理大臣およびその他の国務大臣は、議案について発言するため、何時でも議院に出席することができる。また、答弁あるいは説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第63条〔弾劾裁判所〕
国会は、罷免の訴追を受けた国の裁判所の裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。


第5章    内閣総理大臣および内閣

第64条〔国の行政権〕
内閣総理大臣は、国会の立法権がおよぶ事項に関して、行政権を有する。

第65条〔内閣総理大臣および内閣副総理大臣の指名と任期〕
内閣総理大臣および内閣副総理大臣は、投票資格を有する国民の直接投票により、これを指名する。
2 内閣総理大臣および内閣副総理大臣の任期は四年、再選については二期までとする。ただし、国民代表議院解散ならびに不信任の場合は、その期間満了前に終了する。
3 内閣総理大臣候補者および内閣副総理大臣候補者は、文民でなければならない。また、候補者のそれ以外の資格、投票人の資格、投票の方法、その他投票に関する事項は、法律でこれを定める。

第66条〔国務大臣の任命および罷免、内閣〕
内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。
2 国務大臣は、文民でなければならない。
3 内閣は、内閣総理大臣、内閣副総理大臣および国務大臣によって構成される。
4 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

第67条〔内閣総理大臣、内閣副総理大臣および国務大臣の兼職禁止〕
内閣総理大臣、内閣副総理大臣および国務大臣は、裁判官ならびに地方公共団体の公務員を兼ねることができない。
2 内閣総理大臣、内閣副総理大臣および国務大臣は、営利企業に従事し、または自ら営んではならない。また、営利企業以外の事業に報酬を得て従事してはならない。

第68条〔内閣総理大臣、内閣副総理大臣および国務大臣の報酬〕
内閣総理大臣、内閣副総理大臣および国務大臣は、法律の定めるところにより、その職務に対して定期的に相当額の報酬を受ける。

第69条〔内閣総理大臣不信任決議と国民代表議院の解散〕
内閣総理大臣は、国民代表議院が在籍議員の三分の二以上で不信任の決議案を可決したとき、内閣副総理大臣および国務大臣とともに辞職しなくてはならない。また、その場合、国民代表議院は解散される。

第70条〔内閣総理大臣による国民代表議院の解散と内閣の辞任〕
内閣総理大臣は、国民代表議院を解散することができる。また、その場合、内閣総理大臣は内閣副総理大臣および国務大臣とともに辞職しなくてはならない。

第71条〔国民の直接投票による内閣総理大臣の不信任〕
内閣総理大臣は、投票資格を有する国民の一割の発議がある場合、信任投票を受けなければならない。不信任が有効投票の過半数の場合、内閣総理大臣は内閣副総理大臣および国務大臣とともに辞職しなくてはならない。

第72条〔内閣総理大臣の辞職と指名投票〕
内閣総理大臣が辞職した場合、内閣総理大臣および内閣副総理大臣を指名するための国民投票が、五十日以内に行われなければならない。

第73条〔内閣総理大臣辞職後の内閣〕
内閣総理大臣が辞職した場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続き職務を行う。

第74条〔内閣総理大臣の職務代行〕
内閣総理大臣が、その権限および義務を遂行する能力を失った場合には、残任期間に限り、内閣副総理大臣が、その職務を代行する。
2 内閣総理大臣および内閣副総理大臣が、ともにその権限および義務を遂行する能力を失った場合には、国民代表議院議長が、その職務を代行する。ただしこの場合、内閣総理大臣および内閣副総理大臣を指名するための国民投票が、五十日以内に行われなければならない。

第75条〔内閣総理大臣および内閣の職務〕
内閣総理大臣は、国会を召集する。
2 内閣総理大臣は、議案および予算案を国会に提出し、また一般国務および外交関係について国会に報告する。
3 内閣総理大臣は、内閣を指揮統轄し、その最終責任を負う。
4 内閣総理大臣は、条約を締結する。ただし、事前あるいは事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
5 内閣は、他の一般行政事務の外、次の事務を行う。
一 法律を誠実に執行し、国務を処理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 法律の定める基準に従い、国家公務員に関する事務を統轄すること。
四 法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、刑罰を設けることができない。
五 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を決定すること。

第76条〔法律および政令の署名〕
内閣総理大臣は、国会で議決された法律に署名しなければならない。
2 政令は、内閣総理大臣の署名を必要とする。

第77条〔国務大臣の特典〕
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、逮捕され、また訴追されることはない。ただし、このために、訴追の権利は、阻害されない。


第6章    安全保障

第78条〔侵略戦争の否認〕
日本国は、侵略戦争を行わず、また他国による侵略戦争を是認しない。

第79条〔国軍の保持〕
日本国は、自らの独立と主権を守るとともに、国際社会の平和に寄与するため、国軍を保持する。

第80条〔国軍の最高指揮権〕
内閣総理大臣は、国軍の最高指揮権を有する。

第81条〔国軍に関する国会承認〕
国軍の兵力、編成、予算については、国会の承認を得なければならない。
2 国軍の出動、派遣にあたっては、事前もしくは事後五日以内に、国会の承認を得なければならない。

第82条〔軍事裁判所の設置〕
国軍の任務に関する事項についての裁判は、特別裁判所である軍事裁判所がこれを行う。ただし、終審として裁判を行うことはできない。

第83条〔非常事態宣言〕
内閣総理大臣は、日本国の主権ならびに日本国民の安全が著しく脅かされる場合、非常事態を宣言し、法律に基づき、国のすべての行政機関ならびに地方公共団体に対して、直接指示および命令を発することができる。
2 非常事態宣言は、宣言が発せられた後三日以内に、国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、非常事態の解除を宣言することができる。また、国会は、内閣総理大臣の宣言にかかわらず、非常事態の解除を宣言することができる。
4 非常事態下で内閣総理大臣によって発せられた指示および命令は、非常事態の解除とともに効力を失う。
5 国民代表議院は、非常事態宣言下では解散されない。


第7章    国の財政

第84条〔国の財政運営の基本原則〕
国の財政は、国会の議決に基づいて内閣総理大臣が行使し、その運営責任を負う。
2 国会および内閣総理大臣は、効率的かつ持続可能な財政運営に努めなければならない。

第85条〔国税〕
あらたに国税を課し、または現行の国税を変更するには、国の法律または国の法律の定める条件によることを必要とする。

第86条〔国費の支出および国の債務負担〕
国費を支出し、または国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

第87条〔国の予算案と国家の議決〕
内閣総理大臣は、毎会計年度および特別に必要な場合には複数年度にわたる国の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

第88条〔予備費〕
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣総理大臣の責任でこれを支出することができる。
2 すべての予備費の支出について、内閣総理大臣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

第89条〔皇室財産・皇室の費用〕
すべての皇室財産は、国に属する。すべての皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。

第90条〔公金の支出および公の財産の利用制限〕
公金は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のため、または公に属さない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出してはならない。
2 公の施設の利用については、法律に定める手続きをもってすれば、公共の利益に反しない限り、その利用を認可する。

第91条〔財政状況の報告〕
内閣総理大臣は、国会および国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の歳入歳出、収入支出および貸借の状況について報告しなければならない。

第92条〔会計検査院、決算検査、国会による勧告〕
財政運営の状況を検査するため、国会に帰属する会計検査院を設ける。
2 内閣総理大臣が作成した国の歳入歳出、収入支出および貸借の決算は、すべて毎年会計検査院が検査し、これを国会に提出しなければならない。
3 国会は、会計検査院の報告に基づき、改善の必要があると判断した場合、内閣総理大臣に改善措置を講じるよう勧告することができる。


第8章    地域主権

第93条〔州の設置〕
広域の地方公共団体として州を置く。

第94条〔州の権能〕
州は、次の事項に関して、立法を行い、行政を遂行する権能を有する。
州内の課税、州の信用に基づく借入、警察、州の裁判所、州の検察、河川、道路、通信基盤、空港整備・維持、港湾整備・維持、農業・農地整備、上下水道、産業廃棄物収集・処理、林野事業、災害復旧、医療保険、能力開発、職業安定、雇用・労働組合対策、社会福祉、児童福祉、老人福祉、保育所、介護、消防、救急、伝染病予防、生活環境整備、医療、中高等教育、基本教育、幼稚園、図書館、公園、都市計画、街路、住宅、公害対策、戸籍・住民基本台帳。

第95条〔州議会と州知事〕
州は、域内の立法機関として州議会を設置し、その行政機関の長たる知事を置く。
2 州議会の議員および州知事は、その州の住民が直接選挙する。
3 州は、州議会ならびに州知事の権能を定めるための州法を制定しなければならない。

第96条〔市の設置と権能〕
州は、基礎的な地方公共団体として市を置くことができる。
2 州は、市を置く場合、州内部における自治を促進するため、州と市の権能を定める州法を制定しなければならない。
3 市は、その責務を遂行するために、州法に基づき、必要な条例を制定することができる。

第97条〔州間の財政調整〕
州間の財政力に著しい不均衡が生じる場合には、すべての知事で構成される財政調整会議で州間の財政調整を行うことができる。


第9章    裁判所

第98条〔司法権、裁判所、特例の裁判所〕
すべて司法権は、最高裁判所および法律によって設置する下級裁判所、ならびに州の法律によって設置する裁判所に属する。
2 特例の裁判所は、憲法で定められたもの以外設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。

第99条〔法令審査権と最高裁判所〕
最高裁判所は、一切の条約、法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかどうかを決定する権限を有する終審裁判所である。

第100条〔最高裁判所の権限〕
最高裁判所は、次の事項を管轄する。
一 条約、法律、命令、規則または処分について、内閣総理大臣もしくはそれぞれ在籍議員の三分の一以上の国民代表議院議員または州代表議院議員の申し立てに基づき、憲法に適合するかどうかを審判すること。
二 具体的訴訟事件で、下級裁判所または州の裁判所が求める事項について、憲法に適合するかどうかを審判すること。
三 具体的訴訟事件の当事者が、下級裁判所または州の裁判所の憲法判断に異議がある場合に、その異議申し立てについて、審判すること。
四 国の法令にかかわる訴訟、または複数の州にかかわる訴訟についての終審を行うこと。

第101条〔最高裁判所の判決の効力〕
最高裁判所が憲法に適合しないと決定した場合には、その決定は、それ以降、あらゆる国および地方公共団体の機関を拘束する。

第102条〔最高裁判所の裁判官、定年、報酬〕
最高裁判所は、その長たる裁判官および法律の定める人数の裁判官で構成し、長たる裁判官以外の裁判官は、その定数の半分ずつを国民代表議院および州代表議院のそれぞれの指名に基づいて内閣総理大臣が任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
3 最高裁判所の裁判官は、定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、減額することができない。

第103条〔国民審査〕
最高裁判所の裁判官は、その任命後初めて行われる州代表議院議員選挙の際、国民の審査に付し、その後6年ごとの州代表議院議員選挙の際に国民の審査に付すものとする。
2 前項において、投票者の過半数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免される。
3 審査に関する事項は、法律でこれを決める。

第104条〔下級裁判所の裁判官、任期・定年・報酬〕
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の長がこれを任命する。
2 その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達したときには退官する。
3 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第105条〔最高裁判所の規則制定権〕
最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、前項に基づいて規定される規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

第106条〔州の裁判所および裁判官の法的地位〕
州の裁判所は、州の法令にかかわる訴訟についての裁判を行う。
2 州の裁判制度および裁判官の法的地位は、それぞれの州の法律によってこれを定める。

第107条〔裁判官の独立、身分保障〕
すべての裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法および法律にのみ拘束される。
2 すべての裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。

第108条〔裁判の公開〕
裁判の対審および判決は、公開法廷でこれを行う。
2 裁判所が、担当裁判官の過半数で、公の秩序、善良の風俗または当事者の私生活の利益を害するおそれがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。


第10章    改正手続

第109条〔改正の手続き、その公布〕
憲法の改正は、国会の各議院において、在籍議員の三分の二以上の賛成をもって可決する。
2 憲法改正案を発議するには、各議院において在籍議員の四分の一以上の賛成を必要とす
る。また、内閣総理大臣は、議員の賛成にかかわらず、憲法改正案を発議することができる。
3 憲法改正案が可決されたときは、天皇は国民の名で直ちにこれを公布する。