2014

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草案<一部>

産経新聞

Sankei Shimbun

「国民の憲法」1 2014年4月30日


日本国は先人から受け継いだ悠久の歴史をもち、天皇を国のもといとする立憲国家である。

日本国民は建国以来、天皇を国民統合のよりどころとし、専断を排して衆議を重んじ、尊厳ある近代国家を形成した。山紫水明の美しい国土と自然に恵まれ、海洋国家として独自の日本文明を築いた。よもの海をはらからと願い、和をもって貴しとする精神と、国難に赴く雄々しさをはぐくんできた。

日本国民は多様な価値観を認め、進取の気性と異文化との協和によって固有の伝統文化を生み出してきた。先の大戦による荒廃から復興し、幾多の自然災害をしなやかな精神で超克した。国際社会の中に枢要な地位を占め、国際規範を尊重し、協調して重要な役割を果たす覚悟を有する。

日本国は自由主義、民主主義に立脚して、基本的人権を尊重し、議会制民主主義のうえに国民の福祉を増進し、活力ある公正な社会を実現する。国家の目標として独立自存の道義国家を目指す。人種平等を重んじ、民族の共存共栄をはかり、国際社会の安全と繁栄に積極的に貢献する。

われら日本国民は、恒久平和を希求しつつ、国の主権、独立、名誉を守ることを決意する。これら崇高な理想と誇りをもって、ここに憲法を制定する。


第1章 天皇

第1条〔国柄〕
日本国は、天皇を国の永続性および国民統合の象徴とする立憲君主国である。

第2条〔国の元首〕
天皇は、日本国の元首であり、国を代表する。

第3条〔皇位の継承〕
皇位は、皇室典範の定めるところにより、皇統に属する男系の子孫がこれを継承する。

4条〔天皇の権能、内閣の補佐および責任〕
天皇は、この憲法の定める国事行為および公的行為を行う。
2 天皇のすべての国事行為および公的行為は、内閣がこれを補佐し、その責任を負う。

第5条〔摂政〕
皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は天皇の名で国事行為を行う。

第6条〔三権の長の任命〕
天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、衆議院の指名に基づいて、衆議院議長を任命する。
3 天皇は、参議院の指名に基づいて、参議院議長を任命する。
4 天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所長官を任命する。

第7条〔天皇の国事行為および公的行為〕
天皇は、左の国事行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令および条約を公布する。
二 国会を召集し、衆議院を解散する。
三 国会議員の選挙を施行する。
四 国務大臣および法律で定めるその他の公務員を任免する。
五 全権委任状ならびに大使および公使の信任状を発する。
六 外国の大使および公使の信任状を受理する。
七 栄典を授与する。
八 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を行う。
九 儀式を主宰する。
十 元号を制定する。
2 天皇は、左の公的行為を行う。
一 伝統に基づく皇室祭祀を行う。
二 国家的儀式または行事に出席し、国内を巡幸する。
三 前二号のほか、日本国民統合の象徴としてふさわしい行為を行う。

第8条〔皇室典範の改正〕
皇室典範の改正は、事前に皇室会議の議を経ることを必要とする。

第9条〔皇室の財産〕
皇室の財産は、世襲財産を除き、予算に計上して国会の議決を経なければならない。


第2章 国の構成

第10条〔国民主権〕
主権は、国民に存し、国家権力は、国民に由来する。国民は、その代表者を通じて、またはこの憲法の定める方法により、主権を行使する。

第11条〔国民〕
日本国民の要件は、法律でこれを定める。

第12条〔領土〕
日本国の領土は、日本列島、付属島嶼および法律で定める島嶼である。

第13条〔国家主権、国および国民の責務〕
国は、その主権と独立を守り、公の秩序を維持し、かつ国民の生命、自由および財産を保護しなければならない。
2 国民は、みずから国家の一員であることを自覚し、その発展に寄与するよう努めなければならない。

第14条〔国旗および国歌〕
日本国の国旗は日章旗、国歌は君が代である。
2 国民は、国旗および国歌を尊重しなければならない。


第3章 国防

第15条〔国際平和の希求〕
日本国は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国が締結した条約および確立された国際法規に従って、国際紛争の平和的解決に努める。

第16条〔軍の保持、最高指揮権〕
国の独立と安全を守り、国民を保護するとともに、国際平和に寄与するため、軍を保持する。
2 軍の最高指揮権は、内閣総理大臣が行使する。軍に対する政治の優位は確保されなければならない。
3 軍の構成および編制は、法律でこれを定める。


第11章 緊急事態

第114条〔緊急事態の宣言〕
外部からの武力攻撃、内乱、大規模テロ、大規模自然災害、重大なサイバー攻撃その他の緊急事態が発生した場合には、内閣総理大臣は、国会の事前または事後の承認のもとに、緊急事態を宣言することができる。

第115条〔緊急命令および緊急財政処分〕
緊急事態が宣言された場合には、危機を克服するため、内閣は法律に代わる政令を定め、および緊急財政処分を行うことができる。
2 前項の目的を達するため、必要やむを得ない範囲で、内閣は、第30条〔通信の秘密〕、第34条〔居住、移転および職業選択の自由〕、第35条〔財産権および知的財産の保護〕、第36条〔適正手続きの保障〕および第37条〔逮捕、抑留・拘禁および捜索・押収に対する保障〕の権利を制限することができる。

第116条〔失効宣言〕
前条の政令および緊急財政処分について、内閣は、速やかに国会の承認を経なければならない。
2 前項の承認が得られなかったときは、内閣はその失効を宣言しなければならない。


第12章 改正

第117条〔憲法改正の手続きおよび公布〕
この憲法の改正は、各議院の総議員の過半数の議決により、国会が国民に提案して、その承認を経なければならない。この承認には、憲法改正のための国民投票において、有効投票の過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について、前項の承認を得たときは、天皇は、直ちにこれを公布する。