知る権利

The Right to Know

国民の権利と義務を規定している第3章は、憲法が保障する人権の種類がリストされているため、「人権カタログ」とも呼ばれる。憲法制定時には認識されていなかった新しい概念による人権が憲法で十分に保障されるか否か、憲法を改正し新たに規定すべきかが争点になってきた。憲法改正の是非において主に議論される「新しい人権」は「プライバシー権」、「知る権利」、そして「環境権」である。いずれも背景には、都市化や情報化などによる社会の変化を受けて、これらの人権が従来の人権意識では十分に守ることができないのではないかという問題意識がある。一方で、いずれの「新しい人権」も、既存の条文が根拠たりえるという立場から憲法改正の必要性を退ける立場もある。

「知る権利」は、民主主義国家の国民の基本的権利として、国政から生活の領域まで、国民が必要とする公的情報にアクセスできる権利である。「知る権利」の概念は1950年代以降、アメリカを中心としたジャーナリストによる報道と取材の自由を求める運動などを通じて広く認知されるようになった。日本では、1972年の外務省公電漏洩事件が、外交交渉について国民が知る権利が注目されるきっかけとなった。同事件では、沖縄返還協定の交渉において日米間でかわされた密約の情報が流出、国家機密漏洩とその教唆の罪により外務省事務官と新聞記者が逮捕された。1999年には個人情報や機密情報等の例外を除き、行政文書の開示請求権を認める情報公開法が制定された。その後、安倍晋三政権期の2013年に、安全保障に関わり秘匿性が求められる情報を「特定秘密」に指定し保護する特定秘密保護法が成立した。本法は、「知る権利」を侵すとの批判を招いた。なお「知る権利」は憲法21条の「表現の自由」に基づき保障されると考えられる。

民主党政権期(2009-2012)を除き、1999年から自民党と連立政権を運営してきた公明党は、憲法改正に関して比較的慎重な姿勢を堅持してきた。しかし公明党は憲法改正自体に否定的ではなく、日本国憲法が掲げている「恒久平和主義」、「基本的人権の尊重」、「国民主権」を維持しながら、時代の変化によって出てきたさまざまな社会的要請を受けて憲法を補強する「加憲」の立場をとっている。そして、憲法に加えるべき新しい理念や権利として「環境」、「プライバシー」、「地方自治」を挙げている。