一票の格差

Vote Disparity

自民党は2018年に憲法改正案を主要4項目に絞った。自衛隊の明記、緊急事態条項、私学助成を含めた教育の充実とともに、参院選の「合区」解消(47条)を盛り込んだ。参院選の合同選挙区は、2015年に成立した公職選挙法改正案に基づき、2016年の選挙から実施された。地方の人口減少を背景に、有権者一人あたりの一票の価値が選挙区によって不均衡になる、いわゆる「一票の格差」の是正を目的とした措置であった。参院選の選挙区は、それまで都道府県を単位としてしてきたが、鳥取権と島根県、徳島県と高知県をそれぞれまとめ、一つの選挙区を作った。しかし自民党は合区に消極的で、過疎地を含めた地域色のある住民の意見を国政に反映するために、都道府県単位の選挙制度を維持すべきであると主張している。2012年に自民党が発表した草案でも、選挙区の規定に人口以外の要素、すなわち「行政区画、地勢等」を「総合的に勘案」するとしている。しかし、「行政区画、地勢等」の基準が曖昧であり、自民党が自身に有利となるように選挙区を制定するのではないかという疑念を招いてきた。地方から都市への人口流入が止まらない中、都市部に比べ地方に強い地盤を持つ自民党は国会での一党優位を図るために都道府県単位を維持しようとしている、あるいはそれゆえ都道府県単位維持は党内の合意が得られやすいため憲法改正への党内協調の切り札にしているといった批判がある。

一票の格差については、かねてから憲法の定める法のもとの平等(14条)に悖るとして訴訟が頻発していた。最高裁判所による初めての違憲判決は1976年に出された1972年の衆議院総選挙に関するものだった。その後も格差は解消されず、2013年の参議院選挙についても訴訟が相次いだ。格差は約4.7倍にまで広がっていた。先述の2016年の改正では、合区設置以外にも人口の少ない地域の議席を減らし、東京都や愛知県など人口の多い都市を有する選挙区で議席を増やした。定数の変更はなく「10増10減」となった。その後、2018年の自民党主導で行われた改正で、参議院の定数が6増加されることになり、その内の4議席が比例代表に充てられた。参議院は半数が三年ごとに改選されるため、一度の選挙ごとに各政党が当選順位を付けられる「特別枠」が二つ増えたことになった。これには実質的に合区によって失われた2議席の穴埋め、あるいは現職の救済のために自民党が党利を図ったという批判が起こった。実際に、最高裁判所によって一票の格差に対する違憲判決も続く中、「合区」解消といった格差を助長する自民党案に党外の支持は得られにくい状態にある。野党を中心とする一票の価値を平等にすべきという主張は根強く、加えて連立政権を組む公明党は11ブロックによる大選挙区制を提案している。また、そもそも選挙区の規定については公職選挙法等の改正による対応で十分であり、憲法改正の必要性はないという意見もある。なお「合区」に関しては、一地方公共団体のみに適用される特別法には住民投票による過半数の同意を必要とすると規定している憲法(95条)に違反するという批判もある。