第1章 天皇

Chapter 1: The Emperor

第1章は天皇に関する条文に充てられ、天皇は国民統合、及び国家の象徴であるとする第一条から始まる。国家元首、そして軍の大元帥として、帝国時代の絶大な権威であった天皇の地位の変更は、1946年の憲法改正における最重要点の一つであった。現憲法下では、天皇は第七条に明記された国事行為のみ許されている。皇位継承に関する事項を中心に天皇と皇室について詳細を規定する皇室典範は、第一章を補足する法律として定められた。皇室典範は皇位継承者を男子のみとしているが、2000年以降の世論は女性天皇誕生への国民の高い支持を示しつつある。一方で、保守的な憲法改正論者は、現憲法下で失われた皇室の祭祀や儀礼の公共性を取り戻すべきだと主張している。

第1章 天皇

〔天皇の地位と主権在民〕
第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

〔皇位の世襲〕
第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

〔内閣の助言と承認及び責任〕
第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

〔天皇の権能と権能行使の委任〕
第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

〔摂政〕
第5条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
〔天皇の任命行為〕
第6条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

〔天皇の国事行為〕
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

〔財産授受の制限〕
第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。